生物?環境

特定外来種ガビチョウのさえずりを高山帯で初めて記録

研究イメージ画像
(C)IIJIMA Daichi
 日本で分布を拡大させ続けている特定外来種のガビチョウのさえずりを、中央アルプス木曽駒ヶ岳の高山帯(標高約2770m)で初記録しました。さえずりは、繁殖期の雄が、なわばり主張や雌へのアピールとして発する鳴き声です。ガビチョウの繁殖域が低地から高山帯へと拡大している恐れがあります。

 ガビチョウは本来、中国南部から東南アジアにかけたユーラシア大陸の東岸に分布する鳥類です。日本では1980年代に北九州市で野外記録が得られて以降、各地で分布を広げ、生態系などに影響を及ぼす恐れがあるとして、2024年に特定外来生物に指定されました。

 これまで、国内では低地を中心に分布を拡大していましたが、近年は山間部にも進出していることが報告されていました。しかし、森林限界より標高が高い高山帯での記録はありませんでした。

 本研究チームのメンバーは2024年8月6日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳の高山帯(標高2770m)のハイマツ低木林において、さえずっているガビチョウを発見し、動画撮影しました。さらに、同年9月10日には中央アルプス駒ケ岳ロープウェイのしらび平駅北側の森林(標高約1700m)で、同年10月18日には中央アルプス南部の池山小屋周辺の森林(標高約1750m)で、それぞれガビチョウのさえずりを確認しました。

 これまで、積雪の多い場所や積雪と関連する高標高域はガビチョウの分布域として不適だと考えられていましたが、近年は国内で、夏に山地で繁殖し、冬には積雪の少ない場所に移動する生態を示す個体が出現していることが先行研究で示されていました。

 本研究は、そのような季節的な標高移動を行うガビチョウが、繁殖期に高山帯を利用し始めたことを示唆しています。さえずりは一般的に、繁殖期に雄がなわばりを主張し、また雌に対するアピールとして雄によって発せられる鳴き声だからです。高山帯や亜高山帯で継続的なモニタリングを実施し、ガビチョウの定着が在来の高山性鳥類に与える影響を早急に解明することが必要です。

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プレスリリース

研究代表者

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飯島 大智 助教

山梨県富士山科学研究所研究部自然環境?共生研究科
水村 春香 研究員

長野県環境保全研究所自然環境部
小林 篤 技師

掲載論文

【題名】
侵略的外来種ガビチョウの高山帯におけるさえずりの記録
【掲載誌】
Bird Research
【DOI】
10.11211/birdresearch.21.S6

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